近江牛の味を守りながら進化を遂げるカネ吉ヤマモトフーズ
カネ吉ヤマモトフーズは、明治29年(1896年)に創業し、滋賀県近江八幡市に本社を構えています。
「三方よし(売り手よし・買い手よし・世間よし)」——「売り手と買い手だけでなく、その取引が社会全体の幸福につながるものでなければならない」という理念を大切にし、常に「よい商い」の実現を追求してきました。
厳選指定牧場から一頭買いした近江牛は、職人(肉師)による「目利き・捌き・磨き・寝かせ・裁ち」の5つの技で、伝統の味を受け継いできました。この近江牛を、すき焼き用・しゃぶしゃぶ用の肉、ハンバーグ、ローストビーフとして食卓に届けています。
また、「カネ吉山本コロッケ」は年間100万個以上が販売される看板商品となりました。
創業130年の歴史を支えてきたのは、職人たちの技術と知識です。しかし、その技術は属人化しており、継承が難しい部分があるうえ、工数の無駄も発生していました。
そこで「手仕事しかできない部分は残し、デジタル化で効率化できるところは変えよう」という理念のもと、デジタル技術(DX)を活用し、デジタルと手仕事のハイブリッド化を行い、作業の可視化や業務の効率化を進めることで、技術の継承と働きやすい環境づくりを目指しました。
オンラインとオフラインをつなぐ新しい仕組みの構築を目指して
まず、人事業務の効率化に着手し、人事・労務、勤怠管理、給与計算、採用活動の情報を一元管理し、業務の改善を図りました。次に、スマレジやオンラインショップなど複数のシステムを統合し、顧客情報を一元管理する仕組みを整えました。
店舗、レストラン、オンラインショップ、法人取引など、複数のチャネルで顧客情報が分散していたため、
どのチャネルが利用されているのかが不明でした。
ポイントカードを導入していても、顧客の詳細が不明で、オンラインショップの登録者数さえも明確に把握できていませんでした。
このままでは、お客様一人ひとりに最適なサービスを提供することが難しいと感じ、
すべてのシステムを連携させ、オンラインとオフラインの垣根をなくす決断をしました。
スマレジを選んだ最大の理由は、
API連携が可能で、既存のシステムとスムーズに統合できる点でした。
オンラインショップと実店舗のデータをつなげ、顧客情報を一元管理することで、お客様の購買履歴や利用状況を把握し、より的確なサービスやマーケティング施策が展開できると確信しました。
また、システム構築の過程で、もともと利用していたECカートを見直し、2023年9月にShopifyへ移行しました。
スマレジとShopify、そしてアプリを連携させることで、オンラインとオフラインを問わず、スムーズな購買体験を提供できる環境を整えました。
現在では、すべてのシステムがシームレスに連携し、どのチャネルからでもスムーズにお買い物ができるようになっています。これからも、お客様にとってより便利で快適な環境を提供するために、システムの最適化を進めていきます。
株式会社 カネ吉ヤマモトフーズ 代表取締役 德地様
スマレジ導入による業務効率化とデータ駆動型経営の実現
スマレジの導入により、
売上管理の一元化と業務効率化が実現しました。
これにより、
幹部やマネージャーはリアルタイムで売上データを確認でき、適切なタイミングで迅速な経営判断が可能となり、経営の柔軟性が向上しました。
複数店舗の運営において、売上や在庫、顧客情報を一元管理できる点が大きな強みです。
さらに、
モバイルオーダーやECサイトの売上も一括で管理でき、会員データの可視化が進んだことで、どのチャネルを利用しているか、どのお客様が利用しているかを即座に把握できるようになりました。
また、当社ではオンライン注文とカタログ注文の両方を活用しており、現在の比率は65%がECサイトやモバイルオーダーなどのオンライン注文、35%がカタログ注文となっています。紙のカタログを見てモバイルオーダーを利用するお客様も多く、特にシニア層にはカタログの利便性が支持されています。
そのため、カタログはA4サイズに統一し、視認性と使いやすさを重視。カタログを活用することで、オンライン注文への誘導をスムーズに行い、より多くのお客様に快適な購買体験を提供しています。
スマレジでは
会員情報をデータ化し、購買傾向を分析できるため、リピーター獲得施策をより効果的に実行できるようになりました。
従来のポイントカードでは蓄積できなかった顧客データを可視化できることが、スマレジ導入の大きなメリットです。
このデータを活用することで、
ターゲットを絞ったマーケティングが可能となり、顧客にとってより魅力的な提案ができるようになりました。
このシステム導入により、店舗運営は「勘や経験」に頼るのではなく、「データに基づいた判断」へと変わり、経営基盤を強化し、持続可能な成長に繋がりました。
50%がリピーター、アプリを活用した顧客との強固なつながりとブランド価値の向上
当初、LINEのデジタル会員証は選ばず、アプリへの投資を決断しました。大手企業がアプリやLINE、SNSを幅広く活用する中、私たちは中小企業として、すべてを運用するのが難しいため、アプリに特化し差別化を図る方針を採ることにしました。
LINEと比較して、アプリは多機能で、特にブランディングには適しているという点が大きなメリットです。例えば、イベント案内を行う際、LINEでは軽い印象を与えがちですが、アプリならしっかりと情報を届けることができます。
また、アプリは一度インストールされると削除されにくいため、長期的に顧客とのつながりを維持しやすいという利点もあります。
当社のブランドアプリは、
オンライン注文の受付だけでなく、モバイルオーダー、クーポン配布、イベント情報、採用情報など、さまざまな機能を一つのアプリに集約しています。特に、プッシュ通知を活用することで、クーポンやキャンペーン情報をお客様に確実に届けることができる点が強みです。
地域密着型のビジネスを展開している当社では、リピーターのお客様が多いことが特徴です。
例えば、近江八幡市の人口約8万人に対し、
当社アプリのインストール数は毎月約1,000人ずつ増加し、導入から1年半で累計2万5,000人を超える成果を達成しました。
この成果は、従業員全員が「ユニクロアプリの横にカネ吉アプリを」というスローガンを掲げ、生活に溶け込む重要性を理解し、積極的に案内を行った結果だと考えています。
さらに、
スマレジと連携することで、実店舗・モバイルオーダーの購買データを一元管理し、分析することが可能になりました。最初は50代以上のお客様が中心だったのが、最近では若年層の割合が少しずつ増えてきており、アプリを通じて新しい層にもリーチできていることが分かります。
現在、50%以上のお客様が2回以上利用しており、このリピート率には大きな自信を持っています。会員数は順調に伸びていますが、一定数の休眠顧客も存在しています。そのため、クーポン配布などを活用し、再利用を促す施策を行っています。
また、アプリの利用をサポートするために「アプリサポートセンター」を設置し、特に高齢のお客様には電話でのサポートや店頭でのインストール補助を提供し、スムーズな利用を支援しています。アプリ運用には月30万円弱の費用がかかっていますが、これは単なるコストではなく、ブランド構築の観点から重要な投資と捉えています。
アプリ内に多くのコンテンツやバナーを追加することで、サービスの価値を高め、お客様に「カネ吉のサービスは良い」と認識していただけるよう努めています。これこそが、単なる販促活動ではなく、長期的なブランド強化のための先行投資だと考えています。
モバイルオーダー導入でお客様のタイムパフォーマンスを最大化
当社のコロッケは年間100万個以上売れる人気商品ですが、
注文を受けてから揚げるスタイルのため、繁忙期には最大1時間お待ちいただくこともあり、お客様にご不便をおかけしていました。そこで、モバイルオーダーを導入し、事前に注文していただくことで、並ばずにすぐ受け取れる環境を整えました。 モバイルオーダーの導入に際しては、
L.B.B. Cloudを選びました。初期費用を抑え、ランニングコストも安く済むシステムを選ぶことが重要でした。
また、
L.B.B. Cloudはスマレジとの連携が可能で、クレジット決済機能がしっかりと実装できるため、価格・運用コスト・連携機能のすべてが要件を満たしていたことが決め手となりました。
実際に導入してみると、
お客様の反応は非常に好評で、全店でモバイルオーダーからの注文が非常に多い状況です。モバイルオーダーを浸透させることができたのは、お客様の「並ばずに買いたい」というニーズに応えることができたからだと確信しています。
時間を重視したこの施策は、お客様の満足度向上だけでなく、電話注文の減少による従業員の業務負担軽減にもつながり、当社のDX推進にも大きく貢献しました。今後はクーポン施策とも組み合わせ、さらに利用率を伸ばしていきたいと考えています。
また、導入を成功させる大きな要因となったのは、従業員が多かったことです。店舗従業員は全体で約90名出勤しており、お客様に直接アプリの使い方を説明することができたため、スムーズに導入が進みました。
重要なのは、特別な手法を取らず、日常業務の中で丁寧に案内を続けることです。この積み重ねが、モバイルオーダーの定着に繋がり、結果としてお客様の時間の有効活用にも貢献しました。
製造小売業への挑戦と地域連携
製造小売業への挑戦と新工場の展開当社は、製造小売業を目指しており、新しい工場の展開にも注力しています。「自分たちで考え、自分たちで作り、自分たちで売る」という方針のもと、オールプライベートブランドの推進を図っていきます。
その中で、アプリの運用やデジタルでのつながりが重要なポイントとなります。地元のお客様、オンラインのお客様、観光のお客様、すべてをさまざまな場所でつなげ、当社のお客様として取り入れたいと考えており、店舗ではその第一歩を踏み出している段階です。
今後は新しい工場を作り、物販を全国、さらには世界に向けて展開していく構想を描いています。
これまではソフト面の効率化に取り組んできましたが、今後はハード面の設備を整え、それを既存のDX施策と連携させることで、リードタイムを短縮し、物量や品質を考慮しながら、全国のお客様に安心・安全な商品をより早く届けられる体制を整えていきます。
地域社会と連携し、持続可能な事業を展開当社の店舗は県外から訪れるお客様にも利用されており、レストランやオンライン販売を通じて広範囲の顧客層にサービスを提供しています。今後もさらに新店舗を展開し、地域内外の顧客満足度を向上させる計画です。
例えば、草津市にはコロッケ専門店「ころっち」を新規オープン予定です。また、SDGsを意識したメニュー開発にも取り組んでいます。立命館大学と協力し、廃棄されがちなキャベツを活用した「キャベツメンチ」を開発。実際に農家を訪ねると、広大な畑の約3分の1が廃棄されている現状がありました。
市場では安価に取引されることが多いため、当社が優先的に買い取ることで、持続可能な取り組みを進めています。この活動はすでに1年以上継続しており、今後も続けていきます。こうした取り組みを通じて、単なる販売にとどまらず、地域社会との連携を深め、より持続可能なビジネスを目指しています。