養鶏場の直売所、スーパーでの卸売から直営店経営へシフトチェンジ
私たちは千葉県柏市を中心に、千葉県内で養鶏場と直営店を運営しています。
私は3人兄弟の一人で、幼少期から祖父が始めた養鶏場の手伝いをしていたため、家業に興味を持つようになりました。大学卒業後、兄弟とともに養鶏場直売店を立ち上げ、現在は養鶏場の管理、加工品の製造、配送ルートの責任者として働いています。
2013年に養鶏場の隣に直売所を設けた際、初めてスマレジを導入しました。農家さんから野菜や卵を仕入れて販売する道の駅や直売所では、売れた商品とその個数を集計する必要があるため、POSシステムを導入しているところが多かったのです。
スマレジは売上を管理画面ですぐ確認でき、店舗展開時にも複数店舗の売上を管理できる点に魅力を感じました。
iPadレジなら導入が手軽で初期コストも抑えられるため、スマレジを選びました。
リピーターが増えたことにより養鶏場の直営店では手狭になり、また、鳥インフルエンザの流行により農場内に人が近づかないよう、対策として養鶏所から離れた場所に新たに直営店を構えることに決めました。
また、道の駅やスーパーへの卸販売を行っていましたが、現在はこれを縮小し、店舗展開に注力しています。
大規模な店舗での販売は非常にありがたいものでしたが、マージンの負担が大きくなっていました。特に、商品によってはマージンが25%に達することもありました。
お客様が増えてきたタイミングで2店舗目を開店し、スーパーでの卸販売と比べて売上が同等もしくはそれ以上になったため、現在はスーパーへの卸販売から店舗販売へとシフトしています。
地域の『鶏小屋』を目指して
私たちは「鶏小屋」を増やしたいと考えています。昔、田舎の家の裏には鶏小屋があり、朝に「たまごを取ってきて」と言われると、子どもたちがたまごを鶏小屋に取りに行く家庭が多くありました。
現代ではほとんどの人が自分で鶏を飼うことはありませんが、新鮮なたまごを自分で取りに行く楽しさや、美味しいたまごを気軽に楽しんでほしいという思いから、地域の「鶏小屋」として親しみを持たれるお店を作りたいと考えています。
大学生の時に、大学の寮で初めて自分の家の卵ではない生卵を食べ、その新鮮さや味、色味の違いに強い衝撃を受けました。この経験から、自分たちの「農場たまご」の美味しさや特別さをもっと広めたいと心に決めました。
現在は地域に密着した直営店を運営し、ネット販売を通じて全国にお届けしています。また、地域での販売を目指して、養鶏場の立ち上げや買い取りを進めることも夢の一つとしています。
無人店舗で利益率向上
先代から無人販売は行っており、20年ほど前から導入していました。
卵は常温保存でも大丈夫ですが、生もののため、夏の暑さで品質が悪化することがあります。そのため、冷蔵ロッカーでの販売をしていました。しかし、ロッカーが故障すると夜中に対応が必要になることがあり、運用が困難になったため、全て中止してしまったようです。
昨年ロッカー式販売を再開するにあたり、2023年からはグローリーさんの自動販売機を導入しました。ネットで売上を確認できることや、電子マネーなど多様な決済方法に対応している点、スタイリッシュなデザインが魅力です。
コンテナ内にロッカーを設置し、より温度管理がしやすい環境にしています。たまごを冷やしすぎると外に出た時に急激に品質が落ちるので、冷やしすぎないようにコンテナ内を冷やし、その中のロッカーには冷蔵機能はつけていません。
デジタル化により、ロッカー内の室温をパソコンで確認でき、防犯カメラでコンテナ内の状況を監視できるようにもなりました。
無人販売は私たちのコンセプトに合っており、「たまごを取りに行く」感覚を演出するために、BGMに鶏の鳴き声を入れたり、トタンや木材風の壁紙を使ったりして、鶏小屋の雰囲気を再現しています。これにより、楽しさや面白さを提供し、記憶に残るお店作りをしています。
カメラで店内の様子を見ると、お客様が楽しんで購入している様子が伺えます。自動販売機の前でロッカーの位置を確認する際、一人が自動販売機の前で番号を指示し、もう一人がロッカーの前で対応するなど、連携プレーで購入しているシーンが見られます。カメラを通じてアイデアを出したり、環境面を確認したりするのも無人販売ならではです。
無人販売を始めた理由の一つは、人材確保の難しさです。有人店舗を増やすと、急な休みやシフト管理のコストが増えます。そのため、一人で無人店舗3店舗分の配送を行い、人件費を抑え、利益率を高める方針を採っています。
店舗での客層分析には会員証システムEDWARD
直営店では、新たにスマレジと連携できる会員証システム「
EDWARD」を導入し、会員プログラムを始めました。
このシステムを導入した理由は、地域のリピーターのお客様に楽しんでいただくこともありますが、
最大の目的はターゲットを明確にすることです。
どのようなお客様が来店しているのかを肌感覚ではなく、データとして収集できる点が大きなメリットです。
会員データから40代女性のお客様が最も多いことが分かりました。この層は家庭を持ち、良いものを家族に食べさせたり、贈り物として選んだりすることが多いのではないかと予想しています。この情報を基に、店舗のイメージや商品展開を自信を持ってターゲットに合わせて変更できるようになりました。
また、ポイントプログラムとして、
単にポイントを付与するだけでなく、ゴールド、シルバー、ブロンズなどのクラス分けをして、ポイント付与率を変えています。この制度が好評で、
運用開始から3ヵ月で10,000人以上が会員登録をしてくれました。
たまごは生き物から生まれるため、収穫時期や数量は異なります。時期によってたまごの種類ごとに値段が変わるため、いつどのたまごがお買い得かを知らせるメッセージを配信し、お客様にも直売所にもメリットができるようにしていきます。
ロッカー式の無人販売では、スマレジを利用していないため、ポイント付与ができません。自動販売機を併設している有人店舗では、「ポイントはつかないのか?」という質問をよくいただきます。
本来は無人販売でもポイント付与ができれば集客につながるのですが、異なるシステムのため実現が難しいのが課題です。
スマレジの売上データで販売機会を最大化し、廃棄ロスを削減
たまごやソフトクリームは生ものなので、どれだけお店に出せるかを正確に予測するのは難しいです。
たまごの分配については、
店舗と卸先への割合を昨年のスマレジデータを基に、7割や8割といった具合に調整しています。これにより、
店舗の在庫が切れないように配分しています。
ソフトクリームについては、地元の牛乳屋さんに当店の卵を提供し、ソフトクリーム液を作ってもらっています。この発注量の設定が難しく、例えば卵黄を3キロ渡すのと4キロ渡すのでは製造量に大きな差があります。ソフトクリームは日持ちがしないため、売れ残ると廃棄になり、逆に少なすぎると売り逃しが生じます。
そのため、
スマレジの昨年の数日間の売上データをインポートし、Excelで加工して余裕を持った在庫量を設定し、発注しています。これにより、
予測ミスによる大量廃棄や販売機会の損失を最小限に抑えることができ、ロスや売り逃しの回数も減少しています。
アグリーンで農家さん毎の売上集計を簡単に
直売所では、農家さんから仕入れた野菜も販売しています。
これまで、農家ごとの売上明細書を作成する際には、スマレジのデータをダウンロードして売上を集計し、手動で明細書を作成していました。この方法では経理の手間が多くかかっていました。
そこで、スマレジと連携した道の駅・直売所専用システム「
アグリーン」を導入しました。
アグリーンは、
生産者の登録や売上手数料の計算、生産者への売上通知を自動で行うことができます。農家さんの数が増えても、明細書の作成が自動化されるため、経理作業の負担が大幅に減り、他の業務にもっと時間を割けるようになりました。
今後の取り組み
1.持ち運びやすさを追求した新しい包装提案お客様の中には、車ではなく電車で来店される方もいらっしゃいます。そのため、長時間手持ちで運ぶことができる丈夫な入れ物を用意する必要がありますが、包装資材や原材料の高騰が課題となっています。
そこで、例えば有名コーヒーチェーン店のように、マイボトルを持参すると割引が受けられる仕組みを導入することを考えています。具体的には、丈夫な卵ケースを「マイケース」として販売し、お客様が次回以降そのケースを持参すると、割引を提供する仕組みを作りたいと考えています。
2.無人店舗のさらなる省人化無人店舗を増やすにあたり、卵の在庫をリモートで把握できるシステムの導入を進めています。これにより、現地に人が常駐する必要がなくなり、より効率的な運営が可能になります。
3.養鶏業の価値を伝え、未来を切り拓く畜産業は決してきれいな仕事ばかりではありませんが、この業界の魅力を伝えることで、興味を持って働きたい人を増やしたいと考えています。
柏市では、かつて多くの養鶏場が存在しましたが、後継者不足で現在は私たちともう1社しか残っていません。私たちがどのようなたまご屋で、どのように社会貢献をしているのか、私たちの強みやコンセプトをしっかりと発信することで、採用難に打ち勝ち、お客様に新鮮でおいしいたまごを届け続けていきます。