課題・目的
- 従来の販売管理システムでは整備工場の特性に合わず、操作が煩雑で効率が悪かった
- 見積り内容の再入力や手作業の事務作業が多く、ミスや負担が大きかった
導入効果
- 見積りデータが直接レジ会計に反映され、重複入力や事務作業が最大8割削減された
- 見積り明細がレシートに詳細に記載され、内訳が正確に管理できるようになった
- 新しい決済端末を導入し、年間で約800万~1000万円の手数料削減が実現した
自社運営の整備工場と板金工場でアフターサービスを拡充
当社は、主に中古車の買取・販売事業を展開しています。
1994年に創業され、「ガリバー」ブランドを中心に、中古車の買取店を日本全国に展開し、その後、小売業務を拡大しました。さらに、自動車保険や車検、整備などの付帯サービスを提供し、業界でのリーダー的存在となっています。
スマレジを導入したアフターサービス事業では、当社で車をご購入いただいたお客様向けに、車検や整備などを提供する整備工場でのサービスを担当しています。もともと、これらのアフターサービスは外部パートナー企業に委託していましたが、2020年から自社で整備工場と板金工場の運営を開始しました。
本事業部門は、この自社運営の整備工場と板金工場を統括しています。
従来、当社の事業は「車の買取・販売」という小売事業と買取事業の2本柱が中心でしたが、アフターサービス事業の発足により、これらに次ぐ新たな柱として成長しています。
整備工場における販売管理システムの課題と改善の必要性
当初は、既存の小売事業などで利用していた販売管理システムをそのまま使用していました。
整備工場では、車の買取や販売は行わず、車の整備や車検などのアフターサービス提供が中心です。そのため、元々整備工場向けに設計されたものではなく、使いづらさを感じていました。
また、整備工場には「レジ」という文化が根付いていません。
車の販売は取り扱う金額が大きく、基本的に振込や請求書対応が中心だったため、現金でのやり取りやレシートの発行機会が少なかったのです。例えば、車検では見積書や請求書を渡して現金を受け取り、領収書を発行するという形が一般的でした。
このような背景から、レジを設置するという発想自体がありませんでした。
さらに、販売店と整備工場では取引件数が大きく異なります。例えば、販売店が月に10件の取引を行うのに対し、整備工場では月に200件もの取引を処理する必要があります。この差がシステムの使い勝手に大きな影響を与えていました。
IDOM Technology 全事業推進セクション 渡部様
IT部門で主に会計領域のシステムを担当。2021年には、整備工場の販売管理に関わるシステム構築プロジェクトの担当者として任命され、システム連携の実装開発を行った。
展示販売第三営業部 展示販売第三推進セクション 西原様
2020年に整備事業およびアフターサービス事業部が発足、システム課題の解決に向けて渡部様とともにスマレジの導入を推進。整備工場の運営に関わる設備、予算管理、運営体制の構築・育成なども担当。
第1支援本部 事業管理セクション セクションリーダー 田中様
スマレジ導入当時は事業開発管理部に所属し、アフターサービス事業の支援を担当。事業部門や間接部門を横断的に支援しながら、業務フローの改善を推進。
理想の運用体制を構築するためにスマレジとkintoneを活用
見積り内容を販売管理システムに再入力して請求書を発行していたため、工数がかかっていました。
この課題を解消し、整備工場での販売管理業務を効率化することがスマレジ導入のきっかけです。
整備や車検では、明細の数が非常に多く、場合によっては60~70行に及ぶこともあります。この膨大な明細を、レジに登録された商品リストから一つずつ選択する作業は非現実的です。
そこで、
見積りシステムから見積りデータを取り込んだ販売管理システムからPOSレジへその見積りデータを連携し、会計時にデータを呼び出して即座に決済できるフローを構築したいと考えました。
さらに、
決済が完了したデータを再び販売管理システムに戻し、入金の消し込みを行い、その後基幹システムと連携できる仕組みまでを想定していました。
当時、この要件を満たす候補として、スマレジと別の1社がありました。
しかし、別の1社は開発工数が大幅にかかることが判明しました。一方、
スマレジは事前に開発者向けのAPIを公開しており、開発フレンドリーな設計だったため、スマレジの導入を決定しました。
また、販売管理システムには同じくAPIを提供しているkintoneを採用。スマレジからkintoneへのデータ連携に関しては、スマレジ・アプリマーケットで見つけた様々なサービスとノーコードで連携できるアプリ「
Yoom」を活用しています。
見積システムからkintoneへの見積データ送信にもYoomが役立っています。見積りシステム、kintone、Yoom、スマレジを連携させることで、理想的な運用体制を実現する方向へと進めました。
一連の業務工数を最大8割削減
スマレジ導入の開発作業は非常にスムーズに進み、開発開始からわずか4日でAPI連携が完了し、事業部向けにデモを実施することができました。細かな調整を経て、約1ヶ月後には実運用が可能となりました。
まず3店舗でトライアル運用を開始し、その後10工場へ展開、最終的に全工場へと展開しました。この段階的な導入により、開発から4ヶ月で全工場展開することができました。
工場で実施したアンケートでは、見積り作成、販売管理、レジ会計、入金の消し込みなど、業務全体で約5~8割の工数削減が実現したことが明らかになりました。その背景には以下の2点のメリットがあります。
1.重複入力と事務作業の負担軽減による効率化
以前は、システム間で同じ情報を何度も入力する必要があり、事務作業が大きな負担となっていました。
特に、車検に関する工賃や部品代、自賠責保険料、印紙代、重量税などのデータを繰り返し入力するうえ、見積りを修正する際には手作業が多く、入力ミスが発生しやすい状況でした。
この問題は現場スタッフにとって大きなストレスでした。現在では、見積りデータが自動でレジ会計に反映される仕組みが導入され、重複入力や事務作業の手間が大幅に削減されました。
特に、入力ミスが多発していた箇所が改善されたことで、慣れていないアルバイトでもスムーズに作業を進められるようになりました。
さらに、入力データが自動的に連携されることで、車両情報やお客様の名前を簡単に追跡できるようになり、業務の煩雑さも軽減されています。日常業務の負担が減少し、業務フローがより安定したと感じています。
2.見積り明細の改善
見積り明細が非常に細かく管理されている一方で、販売管理システムには「一括で120万円」といった大まかな数字しか反映されず、内訳がわからない状態でした。しかし、スマレジ導入後はレシートに明細が細かく記載されるようになり、この問題が解消されました。
左:ガリバー木更津金田店整備工場 整備フロント 川尻様
右:ガリバー木更津金田店整備工場 工場長 寺本様
新決済端末の導入により年間で約800万~1000万円の手数料削減
キャッシュレス決済の手数料削減を目的に、UFJニコスから紹介された決済端末「JT-VT10」を導入することを検討しました。しかし、当初はスマレジが対応するPOS端末に含まれていませんでした。
そこで2022年11月頃から連携の対応を依頼し、翌年1月には連携が実現しました。
この新しい端末の導入により、年間で約800万~1000万円の手数料削減が見込めるようになり、その効果を大きく実感しています。
システム導入の成功に向けた現場支援
利用システムの変更に伴う運用フローのマニュアルを現場スタッフ向けに作成しました。しかし、システム変更に際して新しい操作を覚えてもらう必要があり、現場スタッフの抵抗が大きかったです。
そのため、何度も工場に足を運び、スタッフと一緒に確認作業を進めました。この取り組みは2021年10月から11月に始まり、翌年2月までに全国の工場で導入を完了しました。
導入時は、各工場に機器を送付し、巡回中のマネージャーやSVに設置を手伝ってもらいました。
その後、現場スタッフが操作に慣れるまでの期間、1か月ほど週1~2回のウェブ相談会を開催。不明点をその場で解決できる体制を整え、少しずつ現場に浸透させていきました。
100店舗展開に向けたシステム強化と顧客情報管理の課題
2027年までに、大型店舗を100店舗展開する計画があります。
大型店舗には基本的に工場が併設されており、現在の倍以上の規模に相当します。
この目標を達成するためには、社内スタッフやお客様の増加に対応できる、より細かくかつ簡単に管理できるシステムが必要です。
特に工場運営においては、お客様の情報や履歴を正確に把握する仕組みが重要と考えています。この課題は社内で議論しているものの、具体的な対応はまだ進んでいません。
まずは現場スタッフが使いやすく、シンプルでありながら、お客様の履歴や明細ログをしっかり記録できるシステムを構築し、それを活用して新たなサービス提供を目指しています。
たとえば、「これまでにどのようなサービスを提供したか」「どの商品を購入されたか」といった情報をスマレジのデータから吸い上げ、外部のマスターシステムに統合して一覧表示できるようにすることが目標です。
また、連絡の履歴や担当者情報も記録し、店舗単位だけでなく全社的に管理できる仕組みを構築したいと考えています。
スマレジの拡張性による整備工場業務の効率化と中小企業への活用期待
スマレジの拡張性は、特に整備工場などの業務フローの効率化に役立ちます。
例えば、見積りデータと売上データを統合管理する機能は、町場の整備工場を含む多くの事業者が抱える課題を解決します。こうしたツールのパッケージ化が進むことで、より多くの中小企業での活用が期待されます。
現場での一元管理が可能になることで、手作業や重複作業が削減され、業務効率が向上します。また、APIを利用することで、企業独自のフローに柔軟に対応できる点もメリットです。特に見積りと決済データの統合管理が整備工場において大きな利便性をもたらしています。