耕作放棄地から生まれた、“農ある暮らし”を届ける複合型リゾート
宿泊・飲食・温浴・アクティビティを一体で届ける、THE FARMという施設 私たちが運営する農園リゾート THE FARM(以下、THE FARM)は、千葉県香取市にある複合リゾート施設です。「農ある暮らしを全ての人に 」をミッションに掲げ、自然や地域の価値そのものを体験としてお届けしています。10万㎡の敷地の中で、グランピング32棟、コテージ17棟、HABITA 10棟をはじめ、キャンプ場、カフェレストラン、温浴施設、農園等でできる体験を一体で提供しています。宿泊の基幹システムにはaipass 、会計まわりにはスマレジ、モバイルオーダーにはQR Order を取り入れ、複合型施設ならではの運営を支える仕組みを整えてきました。
THE FARMの敷地は10万㎡ありますが、もともとは耕作放棄地でした。荒れ果てた畑や田んぼだった場所を開発し、今の形にしてきた経緯があります。そのため私たちにとって、この施設は単なる宿泊施設ではなく、地域の価値をどう再編集して届けるか 、その挑戦の場でもあります。そこで培ったノウハウは、今では外部施設へのフランチャイズやパートナーシップ事業にも広がっています。
広大な敷地の中にある施設の1つ「THE FARM グランピング」
大事にしたのは、お客様視点と経営視点の両立
私たちの施設づくりの根底には、常にお客様が施設をどう使い、どこで心地よさや不便を感じるかという視点 と、運営・経営としてどう成り立たせるかという視点 の両方を揃えて考える、という姿勢があります。どちらか一方だけでは施設は続きません。そのため私たちは、チェックインカウンターも、待合スペースも、お手洗いも、全部含めて、お客様が気持ちよく過ごせる環境を整えることを大事にしてきました。特に女性の方やお子さん連れの方にとって、「ここなら心地よく過ごせる」と思っていただけることは、とても重要だと考えています。
THE FARM グランピング ラウンジ
広い敷地だからこそ、運営は分断されやすかった
施設が点在する構造が、日々の運営負荷につながっていた THE FARMは、一般的なホテルのように一つの建物の中に客室や設備がまとまっている施設ではありません。広い敷地の中に施設が点在し、開発も段階的に進められてきたため、番地も別々、電気の引き込みも別々、インターネット回線も別々でした。つまり、物理的に分断された状態 で運営していたのです。
その結果、電話もPOSも断片化しやすい状態でした。本部に電話が来ても各施設へすぐにつなげず、いったん受けてから伝言を残し、折り返す必要がある。POS も同様に、それぞれの場所で閉じた運用になりやすく、こうした分断は10年前から顕在化していた問題 でした。
このままでは、この先10年、20年が見通せなかった このような状況は、現場の負荷を大きくするだけでなく、お客様体験の面でも限界があると感じていました。そのため、まずは施設運営を支えるシステム全体を見直す必要があると考えました。もっとも、私たちの中では、単に新しいシステムを入れることが目的だったわけではありません。大事なのは、何を中心に置いて全体を組み直すか です。新しいシステムを単発で入れても、それがまた断片化してガラパゴス化してしまうと、結局あとで苦しくなります。
そこでまずは、どこに不都合が起きているのかを洗い出し、その中で最も動かしづらい中核から見直そうという考え方を取りました。今回で言えば、その起点になったのがPMS※です。
※PMS(Property Management System):予約受付、チェックイン・チェックアウト、客室の割り当てや清掃状況、会計・売上などを一元管理する宿泊施設の基幹システム。
株式会社ザファーム 常務取締役 髙橋様
PMSの見直しから、全体のDXは始まった
宿泊予約やチェックインを支える仕組みを、時代に合わせて見直す必要があった もともと、宿泊予約からチェックインまでを支える仕組みには別のシステムを使っていました。グランピングを始めたのが10年以上前なので、当時はそもそもグランピングという業態自体が一般化しておらず、楽天さんやじゃらんさんなどのOTAも今ほど柔軟ではありませんでした。そのため、当時は既存の仕組みを活用しながら運営していました。
ただ、時代が変わって競合施設が増え、OTA活用の重要性も高まる中で、宿泊事業をこれから先も伸ばしていくためには、予約やチェックインを支える仕組みそのものを見直す必要が出てきました。加えて、THE FARMでは無人での宿泊運営 も視野に入れていたため、単に予約を受け付けるだけでなく、お客様が迷わずチェックインできること も重要な要件になっていました。
※OTA(Online Travel Agent):インターネット上で宿泊予約を仲介するサービスの総称。
運用に合う仕組みを求め、PMSを起点に周辺システムを見直し 以前導入していた PMS でも無人チェックインの考え方自体はありましたが、私たちの運用との細かなマッチングが進まず、お客様から見た導線も分かりづらいという課題がありました。予約の途中で別の仕組みに登録し直さなければならず、その問い合わせもザファーム側に来る。そうした状況が続いたため、aipass さんにご相談しました。
PMSを見直すなら、その周辺の仕組みもこの機会に一緒に整理しようと考えました。鍵の受け渡しの負荷も大きかったため、aipass を起点にスマートロックも含めて検討を進めながら、電話環境や会計まわり、POSに加え、勤怠や給与、年末調整などバックオフィス全体も見直しを進め、その中でPOSはスマレジが最有力候補になりました。
株式会社ザファーム 本部 運営副部長 加瀬様
aipassに求めたのは、無人チェックインを現場で成立させること
アプリ不要で、迷わず使えるチェックイン導線を実現 aipassさんを選ぶうえで、私たちが最も重視したのは、アプリを入れなくても無人チェックインができること でした。無人チェックインといっても、お客様のスマートフォンにアプリを入れて、ホームページ側のアカウントと統合して、という流れはかなり煩雑です。
以前の仕組みでは、お客様ご自身のスマートフォンでチェックインしていただく形でしたが、当時はまだ一般化しておらず、戸惑う方も少なくありませんでした。しかも、スマートフォン設定によるトラブルは、こちら側でコントロールができません。
そこで私たちは、こちらでコントロールできる形で、なおかつ直感的に使える無人チェックイン を必須条件とし、その条件に合ったのがaipassさんでした。
チェックイン要員を7〜8名から最大4名へ。お客様に向き合う時間を増やした チェックイン業務そのものも、私たちにとっては重い課題でした。セルフチェックインのグランピング32棟では、チェックインの時間になると一気にお客様が集中 します。以前は1組あたり10〜15分を要しており、チェックインが重なる時間帯には7〜8名の担当者が必要でした。しかし、セルフチェックインの導入によって受付業務の負荷を軽減でき、現在は最大4名で回せる体制 になりました。その結果、お客様はチェックインという事務に時間を使うのではなく、もっと外で遊んだり、滞在そのものを楽しんだりすることに時間を使えるようになった と感じています。
ただし、私たちが目指していたのは、単に人を減らすことではありませんでした。人件費が上がっている時代だからこそ、システム化できる部分はシステム化しつつ、人は一定数残して、その人たちがコンシェルジュ的な役割 を担える体制にしていくという考え方を取りました。薪割り体験やアクティビティのご案内をしたり、季節の野菜や果物を使ったドリンクをご紹介したりと、事務作業ではなく、お客様に向き合う仕事に時間を使える ようになりました。
「aipass 」 セルフチェックイン用のタブレット端末
aipassと連携したスマートロック「RemoteLOCK」のキーボックス
スマレジ連携で、宿泊施設に欠かせない“部屋付け”を形に
部屋付けという当たり前を、アナログ運用で支えていた 私たちがPOSとしてスマレジさんを有力候補と考えた大きな理由の一つは、aipassさんと連携できること でした。というのも、宿泊施設では、お客様は当然のように「部屋付け 」を求めるからです。泊まって、カフェで食事をして、その場では精算せず、最後にまとめて会計したい。これはホテルではごく当たり前の体験です。
ところが、当時のTHE FARMでは、その当たり前をシステム上で実現することができませんでした。そのため、お客様にはサービスとして部屋付けを提供しながら、裏側では完全にアナログな運用で何とか成立させていました。カフェで宿泊のお客様が食事をされたら、スタッフが鍵を目視で確認して、ノーキャッシュで会計を閉じ、そのレシートを宿泊部署にFAXで送る。さらに毎晩レシートを宿泊部署のポストに入れて、現物で突き合わせて請求をかける。そのような運用を続けていたのです。
aipassとスマレジの連携で、部屋付けと月間数十時間規模の手作業削減を実現 スマレジはクラウドPOSなので、離れた場所にあるレジの伝票も共有 できます。一方で、aipassさんはスマレジと連携しているため、スマレジで起こした伝票を宿泊台帳側に反映させること ができます。この二つがつながることで、私たちがずっと実現したかった「部屋付け」を、ようやく現場で形にできる道筋が見えました。
実際には、カフェで会計した伝票をスマレジから宿泊台帳側に反映させ、部屋付け会計として処理しています。一部には売掛入力や月末の社内請求といった手作業も残りますが、以前のような FAX や紙を前提にした運用に比べれば、大きく前進しました。
宿泊棟と飲食拠点が複数に分かれている分、部屋付けに関わる手作業も膨らみやすい状況でした。各部署で1日1時間程度発生していた手作業は、月間数十時間規模にのぼっていた ため、お客様が求める導線を崩さずに、現実的に回せる形へと近づけたことは、運営面でも大きな改善だったと感じています。
グランピングのテント内から部屋付けで注文できるモバイルオーダー「QR Order 」
システム構成図
朝食管理や滞在導線まで、運営全体が変化
無人運営に合わせて、朝食時間の管理も見直し また、今回の見直しによって変わったのは、宿泊予約や部屋付けの運用だけではありません。例えば朝食の時間管理です。うちは朝食スペースが限られているので、1時間制でお客様に選んでいただいています。以前は時間帯ごとの朝食カードを紙で管理していましたが、無人チェックインではその方法は使えません。そこで今は、セルフチェックインの流れの中で朝食時間を選んでいただき、時間帯ごとの空き枠も管理できる ようになっています。 こうした仕組みに変わったことで、現場の管理がしやすくなっただけでなく、お客様にとっても、チェックインから滞在中の過ごし方までをよりスムーズに選べるようになりました。
THE FARM カフェ 店内
個別の業務改善ではなく、滞在全体を自然につなげたかった
私たちが目指していたのは、個別の業務を便利にすることだけではありません。チェックイン、朝食時間の選択、その後の過ごし方、そして園内での注文体験まで、一つひとつがバラバラの手続きとして存在するのではなく、お客様にとって一つの流れとして自然につながって感じられる状態 をつくりたかったのです。その意味では、会計や部屋付けだけでなく、QR Orderのような注文導線も含めて、滞在全体を支える仕組み を整えていくことが重要でした。
宿泊、飲食、アクティビティが点在している施設だからこそ、それぞれの接点が分断されてしまうと、お客様にとっては使いづらい施設になってしまいます。今回の見直しによって、そうした滞在導線を少しずつ整えられたことは大きかったです。単に運営を効率化するためではなく、お客様にとってわかりやすく、心地よい体験を支える土台を整えることにつながった と受け止めています。
THE FARM カフェ 卓上に設置されたモバイルオーダー「QR Order 」
複合型施設だからこそ、運営を“つなぐ視点”が欠かせない
広い敷地や複数機能を持つ施設ほど、クラウド連携の価値は大きい 今回、aipassさんとスマレジを中心にシステムを組み直したことで、THE FARMのような広い敷地を持つ複合型施設でも、全体を一つの運営として捉えられる土台ができてきたと感じています。広い敷地を運営する施設は、どうしてもインフラが複数になり、システムも分断されがちです。それは避けがたい部分もあります。
ただ、そのような施設ほど、クラウド型のPMSやPOSを活用する価値は大きい と感じています。分断された現場を、運営上は一つにつなげて考えられるようになるからです。実際、ザファームでも運営をつなぎ直したことで、現場負荷の軽減だけでなく、コスト面でも見直しの手応え がありました。しかも、この考え方は、広い敷地を持つ宿泊施設だけでなく、複数拠点を展開する事業者にもそのまま応用できます。THE FARMは、ある意味でその縮小版を一施設の中で実践してきたとも言えます。
THE FARM BASEのレジ「スマレジ」
大切なのは効率化ではなく、お客様体験と経営を両立させること
私たちが今回つくりたかったのは、単なる効率化の仕組みではありません。お客様にとって自然で快適な体験をつくりながら、運営と経営としても成立する形を整えること でした。宿泊、飲食、アクティビティが点在していても、お客様には一つの施設として気持ちよく使っていただきたい。そのためには、チェックインも、部屋付けも、朝食時間の管理も、裏側の会計も、どこかでつながっている必要があります。
広い敷地を持つ宿泊施設や複数の機能を持つ施設ほど、システムを個別最適で入れていくのではなく、全体をどうつなぐかという視点が重要になるのではないかと思います。目の前の業務を便利にするだけでなく、お客様体験と経営の両方を成立させる土台をどうつくるか。その視点で見直していくことが、これからの施設運営ではますます重要になるはずです。
THE FARM内の案内サイン
農園の先に佇む、「THE FARM コテージ 」