当時本店には新卒で入社した20歳の男性スタッフがいて、タブレットは全く抵抗なく使ってくれました。まずはそのスタッフに自分たちがこれからやりたいデータ分析と予測、そこから出る数字から発注作業をやってもらうことに。リニューアルオープンしたばかりで店内も忙しい時期でしたので、彼と私で試行錯誤しながらデータを蓄積していきました。
はじめはなかなか数字が安定しない中での予測でしたが、3ヶ月が経過したぐらいで数字がピタッと合いだしたんです。これだ、という感覚がありましたね。そこで徐々に店内スタッフにも操作方法を伝えていきました。 中でも印象的だったのが、もう40年もデザート部門を担当してくれている年配スタッフに「こことここを押せば、先月に売れた個数と来月売れる予定の個数がわかる」とタブレットを渡したところ、すぐに販売実績から仕入れ予測や売上実績を見ることができて、自分で操作していたこと。誰でも簡単に操作できる、というのを改めて感じた瞬間でした。
本店で1年間運用し、ノウハウも溜まってきた段階で全店の導入を実行しました。現在、来客予測でいうと95%ぐらいの正確性で推移しています。
インタビューに答えてくださった専務取締役の眞鍋 一成さん
スタッフ自らが学びたいと感じる、データの魅力
ー導入後、スタッフの皆さんへの研修はどのようにされたのでしょうか?
食材の仕入れ目標を売上に対して25%としているんですが、これまで経験が若いスタッフが発注するとだいたい30%ぐらいにまで上がってしまっていたんです。それが20歳の男性スタッフは目標の25%を毎回達成するようになって、同期のスタッフや上司たちも興味を持ち始めてくれました。 ある日、店舗に行ったら操作方法を教えていない別の若手スタッフがタブレットを触っていたのですが、なんと自分で操作して発注をしてくれていました。簡単な操作で予測を見ることができて、スムーズに発注数も理解できたそうです。
研修などしなくても周りから刺激を受けて自発的に学んでいくスタッフが多く、お互いでお互いを高め合って習得していってくれました。
ー「スマレジ・ウェイター」も導入いただいておりますが、活用方法などあれば教えてください。
各店舗の店長がリアルタイムで見て「今あの店は何組のお客様が入っていて、いくら売り上げている」というのが分かるため、良い意味で競争意識が芽生えました。ランチタイムの売上があの店舗に負けていたから、ディナーではこういう動きをして取り返そう、などスタッフが自ら考えて動くことができます。
加えて、ピークタイムの商品の流れもよく分かるようになりました。どの席のお客様が提供済みで、どの席が未提供か、また提供までの時間も見ることができます。全体の流れを俯瞰することで、徐々に「クレームが起こる時はどういう状況なのか」ということまで分かるようになりました。自分たちの接客内容を客観視して、改善点が分かるのも助かっているポイントです。
店頭でも他店舗の状況をひと目で把握でき、操作もスムーズ
ITツール活用で採用にも好影響
ースマレジを含め、ITツール(EBILABやイグレック)を導入されていますが、何が一番変わりましたか?
そもそもなのですが、自分自身にITリテラシーがなかったので、まずは理解することから始めました。良いサービスなのは分かるのですが、当初はどう使って良いのかが分からず悪戦苦闘の毎日だったと思います。 飲食業界では数字に興味がない経営者が多いように感じています。どの数字がどのKPIに結びついているのかが徐々に分かってくると、店舗経営が本当に楽になりました。もっと飲食業界に分析ツールが浸透して運用に乗せることができれば、業界全体のレベルが上がっていくんじゃないかと思っています。
良かった点としては、何よりKPIの管理がしやすくなったこと。複数のデータをタイムリーに見ることができるので、実際に店舗に行かなくても状況が分かります。「おそらくこれから売上が少し落ちていくから、行動を変えていこう」といったアドバイスも離れた場所から伝えることができるようになりました。
また意外な好影響として、採用にもプラスに働いています。愛媛県内ではこうしたITツールを導入している飲食企業が少ないため、興味を持ってくれる子が増えました。若いスタッフが増えると、インスタなどのSNSを活用して自ら集客もしてくれるんですよ。様々な好循環が生まれているのを感じています。
スマレジとEBILABから取れるデータをもとにKPIを管理
ー様々な年代の方がお越しになるお店のようですね。何か工夫されていることがあれば教えてください。
当社のメインターゲットは「36歳の女性」としています。子育てをしていたり、家庭をもっていたり、働いている方々に「なかなか外食できないけど、たまには落ち着いて美味しいごはんを食べたい」という時に訪れてもらえるようなお店づくりを目指しています。
小松本店では未就学児のお子さんから上は80代のおじいちゃん、おばあちゃんまで幅広い層のお客様に来ていただいていているので、テーブルオーダー1つとっても、どちらかの年代の利便性を優先することはしていません。スマホで読み取るQRコード、お店のタブレットメニュー、メニューブックと3種類を用意しており、来店時にまずどのメニューが良いか確認しています。
2023年の今年、当社は100周年を迎えました。“老舗”と呼ばれるほど長く商売を続けて来ることができたのは、現状に満足せずチャレンジし続けてきたからだと思っています。これからも改善を繰り返し、より地域の皆さまに喜んでいただけるお店を目指してゆきます。当店1番人気の「てっぱんナポリタン」は、小松本店がある西条市のソウルフードとして親しまれています。ぜひお近くへお越しの際はお立ち寄りください。
地域の食材を活かしたメニューが人気のマルブン。生産者の持つストーリーからメニュー開発することもあるそうで、その代表が「鯛一郎クンパスタ」。愛情をかけて丁寧に育てた養殖の鯛は、天然と比較して細胞レベルから違うそうで、その美味しさに感動しメニューに採用したとか。海と山に囲まれた愛媛県の良さを広く伝えるため、農家さんへ一軒一軒まわり、今では58農園との取り引きがあるそうです。店舗経営だけでなく、食材の一つひとつにもこだわった同店のメニューはオンラインショップでも購入可能ですので、ぜひお試しください。